2012年10月04日

テクスチャー(続き)

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テクスチャー(質感)だけでアートが成り立たないとすれば、テクスチャーとコンセプトをうまくつなげる必要がある。その点、前回触れた寺村サチコ(繊維造形)の作品は、そのつながりがわかりやすい。布を絞り染めによって立体化した「今夜は女の子」と題する新作は高さが2メートル以上あり、ドレスのようなスタイルと濃い赤が「女の子」というか「女性」の雰囲気を醸し出す(写真は部分)。

画廊の小展示室に合わせてつくった作品だが、来られた方が見るなり「うわっ」と声を上げ、「何でできているのですか」と、お尋ねになることも多い。シルクオーガンジーという薄くて半透明の素材だ。寺村は、引っ張って括る、縫って引き寄せる、襞(ひだ)をつけて縛る、といった、絞り染めの技法を駆使してシルクオーガンジーで形を作る。光沢があるとともに、素材が透けることによって色の濃淡ができるのも特徴だ。

彼女のイメージソースは「少し病んだ女の子」である。サラサラの髪、すらっとした手足、きれいな服。東京の大学に入ったとき、そんな格好でふわふわと街を歩く女の子たちがクラゲのように見えたそうだ。本人によると、そうした女の子たちは寺村に劣等感を抱かせる存在であったが、いつしか外見をまねするうちに、その華やかさは本質を隠すためのものだと気がつき、制作のモチーフに取り入れた。

だから、「女の子」の内面のドロドロした部分も表そうとしている。たしかに、内臓を思わせる膨らみや襞などがグロい。ただ、素材がさらさらしていて軽やかなだけに、美的な心地よさを打ち消すほどのグロテスクさはないだろう。「女の子」のキラキラとドロドロの両義性を表現するうえで、このテクスチャーが生きてくると思われる。金の型染めがゴージャスなので、私のイメージは「女王様」に近いのだけれど。
タグ:寺村サチコ
posted by Junichi Chiba at 18:10| アート