2012年08月06日

ドクメンタを見た

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ドイツ中部のカッセルで5年に1度開かれる国際美術展「ドクメンタ」を見た。世界で200以上ある国際展の中で、イタリアのベネチアビエンナーレとともに最重要のイベントである。フリデリチアヌム美術館、ニューギャラリー、カールスアウエ公園など市内各地の会場で190を超えるアーティストが出品していて、2日かけても回り切ることはできなかったが、十分に見ごたえのある内容だった。
ドクメンタが始まったのは1955年。ナチスドイツによって否定された同時代美術を復権させ、民主的な社会をつくるのに貢献しようという意気込みだったといわれる。そのため視覚的な快楽を提供する「見世物」にとどまらず、はっきりうたってはいなくても、戦争や破壊、復興と再生などを考えさせる作品が多い。

たとえばフリデリチアヌム美術館に展示されたゴシュカ・マキュガ(ワルシャワ生まれ、ロンドン在住)の「Of what is, that it is」(上の写真)。湾曲した壁にかかった作品の大きさに驚き、技法の想像さえつかなかったが、実はタペストリーであった。資料によると、縦が5.2メートル、横が17.4メートルもある。遠景に描かれているのは、ソ連の侵攻や内戦によって破壊されたダルラマン宮殿。中景には傍観者の列。世界の人々の見て見ぬふりが今もアフガニスタンの人々を苦しめていると訴えているようだ。19世紀西洋の画家もオリエントを描いているが、マキュガの作品に「幻想のオリエント」はない。

隣の展示室には、米国出身のマリアム・ガニの映像作品があった。戦災から復興したカッセルの建物内部と被災して廃墟と化したアフガニスタンの建物内部を撮影し、2面スクリーンに映していた。ここでもアフガニスタンである。ただしアフガニスタンの建物であるというのは後からわかったことで、その場では意図を読み取れなかった。社会的なテーマを持つ作品は知識の取得が鑑賞のカギを握ることも確かである。

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もちろんスペクタクルとして楽しめる作品も多かった。ニューギャラリーにあったカナダのアーティスト、ジェフリー・ファーマーの「Leaves of Grass」(2枚目の写真)もその一つ。米国の雑誌「ライフ」に掲載された数々の写真を切り抜いて串を取りつけ、スポンジに差しただけだが、「あっ、この手があったか」と思わせる。映画スターやら食べ物やらの「写真の串刺し」が陽の当たる廊下の端から端まで続いている様子は壮観で、みながじっくりと見ていくからか、展示室から出た人数だけ人を入れるという入場制限をしていた。

この展示は写真撮影の人気スポットでもある。入室の順番待ちをしていたら、後ろにいた年配の女性から、変な英語で「写真を撮るから、どいてくれる」と言われてしまった。来場者のほとんどは一般の人たちであり、お祭り感覚で楽しんでいるのが好ましい。ドクメンタは今回で13回目。会期は9月16日まで。
posted by Junichi Chiba at 15:40| 海外