大阪のホテルで朝食会場に行ったら、入口でプラスチックの透明な手袋を渡された。ビュッフェ台にあるトングの数が限られていて、たくさんの人が同じトングを使うから、感染症対策として手袋をはめてくれということだろう。何か説明されたような気もするが、はっきり覚えていない。とにかくこれは「新しい生活様式」の一つである。
ギャラリストには作品を扱うときに白い手袋をはめる人がいるが、私は基本的に手袋を使わない。2、3回やってみて、手袋をはめても作品の保護にはならないと実感したからだ。爪を切っているし、指輪はしていないし、作品の保護が目的であれば、きれいな手で直に触った方がむしろ良いのではないかと思っている。手袋をはめると、指の感覚が鈍るし、手袋の汚れが作品に付いてしまうデメリットもある。私が手袋をはめるのは、カッコつけたいときだけである。
そんな手袋嫌い(?)な私だから思うのかもしれないが、ビュッフェでの手袋にも問題はありそうだ。テーブルからビュッフェ台に向かうたびに手袋をはめるとすると、そのたびに素手で手袋の表に触れることになる。まさか医療関係者のように裏表ひっくり返して手袋を脱いだりはしないだろう。着脱の回数が多ければ多いほどリスクは増していく。
と思っていたら、驚きの光景が目に入ってきた。向かい側(といっても数メートル離れている)に座った年配の男性がプラスチックの手袋をはめたまま食事をしていたのだ。手袋を着脱すると感染のリスクが増すと考えていたのか、ただの面倒くさがりなのか、知るよしもないが、それはSF映画の一場面のようであった。パンをつかんで口に運んだ、その手袋が口に触れているようにも見えたので、その人自身は潔癖症ではなかっただろうが、これもまた「新しい生活様式」なのかと、妙に感銘を受けた。
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