2018年06月03日

「工芸」打破する仮設展示

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巨大で有機的な物体のうねりを舐めるように見ながら、ゆっくりと階段を下りた。菊池寛実記念 智美術館(東京・港)の地下展示室につながる螺旋階段に、高さ7mの竹の立体が展示されている。四代田辺竹雲斎のインスタレーションだ。東京の美術館で竹工芸の展覧会が開かれるのは33年ぶりと聞いていたが、「竹工芸」という言葉から想像していたイメージがいきなり吹き飛んだ。

面取りした竹ひごを編んでいくだけで、これだけの躍動感が生まれるものだろうか。3本の幹のようなものが絡み合い、空へと向かっていくイメージは工芸の領域を超えているように思える。階段を十分に下りた位置から見上げると、天井の光が透けて、何かしら崇高なものが感じられるのだ。自然の中ではなく、都会のビルの中だというのに、一瞬、われを忘れて見とれてしまった。

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田辺竹雲斎のインスタレーションを生で見るのは、正木美術館の正木記念邸(大阪府忠岡町)を訪問したとき以来6年ぶりだった(当時は田辺小竹)。そのときは和室に和の雰囲気の作品があるといった印象だったが、今回は違う。作品と建物の素材感が異なり、コントラストが強烈だ。一カ所から全体像をつかめないため、見る位置を変えるたびに心が騒ぐ。ほかの場所では再現できないだろうから、今見ておこうという切迫感もある。

展覧会のタイトルは「線の造形、線の空間 飯塚琅玕齋(ろうかんさい)と田辺竹雲斎でめぐる竹工芸」(7月16日まで)。東京を拠点にする飯塚琅玕齋と大阪・堺が拠点の田辺竹雲斎の2つの家系の7人の作品によって、大正から現在までの竹工芸の流れをたどるのが趣旨である。緻密に組み立てられた作品もあれば、素朴な趣を生かした作品もあり、表現の幅広さがうかがえたが、導入部のインスタレーションを見たことで「竹工芸」の見方が変わらざるを得なかった。
posted by Junichi Chiba at 17:38| アート