2017年11月08日

雅な建物に異様な空間

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奈良市学園前で開かれているアートプロジェクト「学園前アートフェスタ2017」(11月11日まで)に行ってきた。全国各地に広がった地域型芸術祭の一つだが、ここは自治体ではなく住民が運営している。会場は大和文華館文華ホール、淺沼記念館など6カ所。すべて徒歩圏内にあって、2時間もあれば十分に見て回ることができる。

最初に足を運んだ大和文華館文華ホールはもともと、辰野金吾が設計した奈良ホテルのラウンジの一部で(1985年に同ホテルから移築)、格天井もあればステンドグラスもあるといった具合に、和と洋のスタイルが重なるユニークな建物だ。その中に伊東敏光と原田要が大きめの立体を展示している。この2人を組み合わせたのは、アートディレクターである野村ヨシノリさん(Gallery OUT of PLACE代表)のアイデアだ。

伊東の作品は飛行機型彫刻の「飛行景−廃船の夢−」(2014年、木、390 × 400 × 140 cm)と奈良の街並みをモチーフにしたインスタレーション「壺の中の街 森の中の壺」(2017年、木、壺、サイズ可変)。離れて見たり近づいて見たりすることで風景が立ち上がってくる。原田の大きなキノコのような立体も、視線を動かすことで楽しみが増していくタイプの作品だ。来場者の年配の方が「これ、触ってもいいの」と、原田に聞いていたのは、全体のイメージだけではなく彩色を施した木の表面にも魅力があったからだろう。

野村さんは「2人の作品を組み合わせて彫刻の森のような異様な空間を作りたかった」と話していたが、私にはこの部屋が庭のようにも見えた。フランス式というのか、中心軸の上に視点を固定して見るタイプの庭園ではなく、散策する人が自在にコースを選んで見て回るタイプの庭である。歩きながら視線が移動するので、「風景」は透視図法的には展開せず、時間の経過とともに映像の積み重ねによって成立する。

それにしても伊東の作品も原田の作品も、辰野金吾の雅な建物にそぐわず過剰感がある。特に伊東の「飛行景」は対馬海岸部の荒々しい風景を表しているし、インスタレーションの素材もむき出しの廃材だ。 雅な室内で展示の効果を上げようとすれば、過剰、逸脱に向かうのは一つの解決策なのだろう。2人の作品が意外とマッチしているのは、きっとそのせいだ。平安時代の優美な国風文化以前の要素も、奈良であれば受け入れられると思えてくる。
posted by Junichi Chiba at 14:00| アート