2017年10月01日

思索にふける部屋

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アートコレクターK氏のコレクションルームがほぼ完成し、田中加織、寺村サチコ、千葉麻十佳の作品を納入させていただいた。このコレクションルームは邸宅敷地内に建てられた小ぶりの別棟である。情報を遮断し、ただ作品を感じるだけの空間。建物の中に一人で入って作品と向き合う内藤礼の「家プロジェクト・きんざ」(直島)を意識されたようで、にじり口のような小さな出入口から、ひざをついて中に入る趣向だ(ただしK氏の部屋は非公開)。

内装は白と黒。廃墟としての神殿とでも言ったらよいのか、人類が死に絶えた後に残された建物をイメージされているらしい。扉を開けると、天井から吊り下げられた寺村サチコの「夜に待つ」(上の画像、2017年、シルクオーガンジー、絞り染め、型染め)が目に入る。寺村がこの部屋のために作った作品であり、K氏の言葉を借りれば「部屋の主の一つ」だ。一部に蓄光顔料を使っていて、照明を落とすとしばらくの間、闇に浮かび上がる。

「夜に待つ」の向かい側には千葉麻十佳の「Melting Stone 1」(2016年、ライトジェットプリント、78 x 52 cm)が設置された。特殊なレンズを用いて太陽光を集光し、玄武岩の表面が溶ける様子を撮影した作品だ。溶かしているときの温度は1000度にのぼり、肉眼で光を見ることはできないが、カメラのレンズ越しにマグマの色がよみがえる。K氏はこの建物の完成を機にコレクターを引退されるため、千葉麻十佳の作品がThe last pieceとなった。

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しかし引退といっても、K氏のアートへの興味が尽きたわけではないようである。特に千葉の作品を見ていると制作の動機を知りたいという思いに駆られるらしい。岩石を溶かし、地上のあらゆるものが元は違う姿だったことを想像させる点で、「Melting Stone」は科学的でコンセプチュアル。一見、はげしい病も、たけりくるう熱も見えない。「なぜこうした作品をつくるのか、(コレクションルームにこもって)探ってみたい」とおっしゃっていた。
posted by Junichi Chiba at 18:28| アート