2017年07月19日

買いものはギャラリー

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いい売りものはないか――。偶然なのかどうかわからないが、少し前、海外のギャラリーからこんな問い合わせ相次いだ。売りものといっても作品のことではない。日本のギャラリーを買いたいという話であった。ギャラリーなら何でもよいというわけではなく、それぞれ何かしら利用価値があるところを探している様子だった。

アートの世界でも取引がグローバル化していて、海外のギャラリーは日本のセカンダリー(二次流通品)業者などから作品を仕入れてコレクターに転売している。要するにサヤ抜き商売なのだが、どうせなら日本に進出してセカンダリー業者を通さず作品を確保した方が利幅を大きくできるという計算のようだ。その際、日本で一から拠点を作っていては時間がかかるから、買収によって既存の経営資源を活用しようという考えらしい。

背景には海外ギャラリーの資金力がある。リーマン危機の後、米国、欧州、日本の金融緩和によってあふれたマネーはアートの世界にも流れ込んだ。中でも日本以外の、収益性の優れたギャラリーにマネーが集中した。海外勢はもともと欧米のコレクターへの販路を持っているから、そうしたギャラリーの優位性はより強まった。

一般的には、事業の譲渡や買収は、買われる側にも利点があるはずだ。日本のギャラリーは個人経営かそれに近いところがほとんどで、たいていは後継者がいない。引退を考えているギャラリストの場合、だれかに事業を譲れば会社を解散しないで済む。海外ギャラリーの販路を活用すれば、海外での販売も期待できそうだ。身売りに抵抗がなければ悪い話ではない。だから、手放すところが出てくるだろうとの推測は筋が通っている。

しかし望ましい売り手がそう簡単に見つかるのか、疑問もある。何しろ日本のギャラリーはディレクター1人とアルバイトのスタッフ1人か2人が標準サイズ。こちらが心配する義理はないが、それくらいのところでは小さすぎて、日本の拠点としてステータス感がないし、相乗効果も知れている。かといって大きなところは、在庫に含み損を抱えていれば買いたたけるだろうが、契約関係やリスクの洗い出しが面倒である。売りものはないかと言われても、とりあえず情報収集の段階なのかなと、今のところは思っている。
タグ:ギャラリー
posted by Junichi Chiba at 01:01| アート