2017年06月14日

魔女と愛の戦士

Ayaka Asano FOR EXAMPLE, IF I WAS A SOLDIER OF LOVE.jpg
橘画廊の浅野綾花展「僕の秘密を教えてあげる」が始まって2日目だったか、アーツ前橋館長の住友文彦さんがいらっしゃった。前回の展示が寺村サチコ展だったこともあって、七夕の前後に、寺村がアーツ前橋の外壁に大きな作品を飾るという話を思い出した。住友さんと、織姫がどうとか、魔女がどうとか、言葉を交わしていると、近くにいた浅野は「何、ねごと言ってるんですか」みたいな表情を浮かべていた。

語っていたのは「ねごと」ではなく、寺村サチコが作品の背景として設定したストーリーである。住友さんが展示室を出られてから、その崇高な物語をかみ砕いて浅野に伝えてみた。舞台は七夕の夜の天の川。織姫と彦星が天の川を渡って、年に一度のデートを楽しもうとしたそのとき、天の川の底から3人の魔女が現れて2人の逢瀬の邪魔をする……。シンデレラの継母も真っ青で、寺村らしいと言えばらしい設定である。

それを聞いた浅野は「西洋の文化の東洋の文化への挑戦ですか」と感想を口にしたが、私は内心、「愛の戦士が立ち上がって織姫と彦星を助けます」とか何とか言うのではないかと期待していた。魔女が出てくる昔話ではたいてい、女神か妖精か、主人公を助ける存在が現れるし、浅野には版画と映像それぞれで「たとえば私が愛の戦士なら」(画像、2014年)という作品があるからだ。

しかし浅野に「愛の戦士が立ち上がるんだよね」と水を向けても、「愛の戦士はキューピッドじゃないから織姫にがんばってもらうしかないですね」と素っ気ない。「魔女に邪魔されたくなければ、織姫が愛の戦士に変身して戦えばいいのではないか」というのである。魔女が自己中心的な女性だとしたら、それに対抗できるのも自己中の女性なのだというのは現実的な考えなのかもしれないが。

もっとも寺村にしてみれば、今回はボランティアの力を必要とするから、何か興味深い物語を設定してボランティアの方に張り切ってもらうのが狙いだ(作品の素材には農業用ビニールを使うと言っていた)。「天の川の魔女をつくろう」と題した体験プログラムは6月25日、アーツ前橋で。展示は前橋七夕まつりの7月6〜9日。ちょうどそのころ、ART OSAKAで大阪に行っているため、完成品を見られないのが残念である。
posted by Junichi Chiba at 18:36| アート