2017年04月01日

ギャラリー業界の謎

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きょうから新年度。橘画廊株式会社は7期目に入った。会社を設立してからもう6年も経ったのかと、起業した本人も驚いている。アート業界での経験がなく、アルバイトを1人雇っただけで新規に参入したのだから無理もないのだが、設立直後はドタバタだった。今振り返ればワクワクして楽しかったような気もするが、この年でもう一度同じことをしろと言われたら二の足を踏んでしまいそうだ。

あくまでも労働時間の長さだけを基準にすれば、人生で一番働いたのはだいぶ前、新聞記者になって最初の3年くらいである。夜回りの車で明け方帰宅したら家の前に朝回りの車が待っていたなんてこともあったし、何がそうさせたのかわからないほど仕事ばかりしていた。過労死しなかったのが不思議なくらいである。ちなみに、あのころは日経と住友銀行、野村証券が「三大タコ部屋企業」と呼ばれていた。

そのときほどではないにせよ、零細企業である橘画廊の設立直後も、働けるだけ働くという感じであった。創業者なのだから、だれかに命じられたということではない。とにかく時間など気にせず、目の前の仕事にのめり込んでいた。社会人として仕事に就いたばかりであるとか、事業を始めたばかりであるとか、精神的にヒートアップしている状態では、ある意味、自然なことなのかもしれない。

ギャラリー業界で不思議なのは、6年前の私のような新規参入者ではなく、十分に実績を積んだ同業の先輩がまるで設立間もないベンチャー企業の役員か社員のような勢いで世界中を飛び回って働いていることである。おそらく本人にとっては仕事イコール人生であり、働いているという意識さえないのだろうが、はたから見れば謎である。しかし、もっと謎なのは、その仕事ぶりを後の人にどうやって引き継ぐのかということだ。

もし「おれがやっている通りにやってみろ」などと、後から採用した人に言ったとしたら、けっこうな長時間労働になってしまい、「それは無理です。労働時間ってものがありますから」という話になりはしないか。「来月からあなたを社長にするよ。労働者じゃないから労働時間はないんだよ」と言ったとしても、問題の解決にはならないと思うのは私だけではないはずだ。
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posted by Junichi Chiba at 13:15| アート