2016年11月09日

ミッドサイズギャラリーの変化

FIAC2013
アート関連の英語のウェブサイトを見ていると、ときどきMega Galleryという言葉が出てくる。資金が豊富で海外に支店を持つような大手ギャラリーのことだ。しかし単に大手を指すだけではなく、arrogant(尊大な)というニュアンスを感じさせることがある。野球でいえばヤンキースみたいな位置づけらしく、メガギャラリーのことが書かれた記事はつい読んでしまう。興味を持ったきっかけは2015年4月、The Art Newspaperが「ビッグ5」の支配力について指摘した記事だった。

その記事によると、2007年から13年にかけて、米国の68の美術館で個展が開かれたアーティスト延べ590人のうち3分の1近くがビッグ5の所属であった。ビッグ5とはニューヨークが本拠のペース、ガゴシアン、デイヴィッド・ツヴィルナー、マリアン・グッドマンとロンドンのハウザー&ワースである。つまり、アーティストはこの5つのギャラリーに所属すれば、米国主要美術館での個展への道が開かれやすいということだ。

補足のために大ざっぱに言えば、ギャラリー業界はメガギャラリーとギャラリー、ガレージの3層構造である。メガギャラリーにはっきりした定義はないが、ビッグ5が「メガ」に含まれることは間違いない。ガレージとは展覧会の開催を主目的にしたところで、日本の貸画廊はここに含まれる。(メガがつかない)ギャラリーはメガギャラリーとの対比で、ミッドサイズ(中規模)ギャラリーやエマージング(新興)ギャラリーなどと呼ばれることもある。橘画廊はエマージングだ。

ミッドサイズギャラリーの中にも有力なところはあって、そうしたところはアーティストの育成はせず、もっぱら下位のギャラリーからアーティストを引き抜いている。無報酬のインターンを何人か使い、目星をつけたアーティストのリクルートに成功したら、そのインターンを社員として雇うということもあるらしい。だが、せっかくアーティストを引き抜いても、売れなければそこで終わるし、逆に売れる見通しが立てば、最終的にはメガギャラリーが吸い上げていく。これはエコシステムというよりも食物連鎖のように見える。

面白いのは、今年あたりから、米国でそうした「支配構造」に背を向けるような動きがチラホラ出ていることだ。一部のギャラリーが幅を利かせている現状はさすがに行き過ぎではないか、という反発の表れである。今のところ新しい動きの中で、なるほどと思えるものはないが、ミッドサイズギャラリーが変わろうとしていることは確かだ。その具体的な中身よりも、まずは「金権野球とは一線を画そう」的な気分が日本にも波及してきそうな気がしている。画像はパリのアートフェア、FIAC2013の会場風景。
タグ:ギャラリー
posted by Junichi Chiba at 23:23| アート