2016年05月02日

「どうして3331に」

3331ArtsChiyoda.jpg
扉を開けると、学校のにおいがした。というのは錯覚だったろうか。元学校とはいえ、黒板や教壇がなければ普通の部屋なのだが、なぜかユーミンの「最後の春休み」まで聞こえてきた。「春休みのロッカー室に 忘れたものをとりに行った」という、あの名曲である。高校生(たぶん)が卒業式の後、忘れ物を取りにひとりで学校に行き、好きだった人のことを振り返るといった歌だ。その曲を思い出すほど、ここには学校のにおいが残っている。

橘画廊が今月、東京に移転した。新しい拠点は3331 Arts Chiyoda(千代田区)。旧練成中学校を利用して誕生したアートセンターだ。まだ荷物を運び込んだだけで、せいぜい段ボール箱の開梱をしているくらいなのだが、それでも廊下を歩いていると、ときどき知っている人に会って、「引っ越し大変ですね」などと声をかけられる。決まり文句のように出てくるのは「どうして3331にしたのですか?」という質問だ。

候補地としては六本木などもあったのだが、今のわれわれにはここが合っているように思えた。それくらいの大ざっぱな答えでも、質問された方はなんとなく納得してくれる。あえて言葉を足せば、3331には成長過程にあるギャラリーとアーティストがそろっている、橘画廊も若手主体だから一緒に成長できる環境が欲しかった――。大体そんなところだ。おそらくここで作品を買われる方の動機は、ステータスを求めて有名作家の作品を手に入れるといった類いの動機とは違うのではないかと思う。

東京での初仕事はアートフェア東京(5月11〜14日、東京国際フォーラム)への出展。その後、25日がオープニングである。大阪の加茂昂展の後、対外的には仕事らしい仕事ができず、「春休み」が長引いてしまった。大きな変化には不安もあるが、同じ時間にうずくまっていることなどできないのだから、そろそろ前へ進まなければならない。
posted by Junichi Chiba at 20:05| アート