2016年01月25日

サイズがもたらす効果

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「すごいな」「思っていたより大きいね」――。橘画廊で「加茂昂展 逆聖地」が始まって4日。来る人来る人が絵の大きさに感嘆の声を上げる。加茂の油彩画「逆聖地」(2014年、英語のタイトルはAnti-sanctuary)は縦209センチ、横730センチ。雪山や空と火だるまの人を描いた作品で、遠くの山まで見渡せるようなスケール感に魅力がある。

絵画はしばしば窓にたとえられるが、これだけ大きいと、窓から景色を眺めているというよりも、絵画の中に入り込んだような感覚を抱かせるようだ。ただ大きいだけでなく、一つの壁いっぱいに画面が広がっていて、ほかのものが視界に入りにくいことも関係しているに違いない。作品を前にした方は左へ行ったり右へ行ったり、角度を変えて鑑賞されている。

作品の中には火だるまの人が9人。焼身自殺を想像させるモチーフもあるため、澄み切った空気とは対照的に、おどろおどろしさを感じさせる(シリーズの他の作品はそうでもない)。前回の「Fire and Ice」の話とからめて言えば、氷と火、青とオレンジ、直線と曲線といった「対立」が表現の特徴だ。そうした緊張感をはらむ空間を見せるうえで、7メートルを超えるサイズが必要だったのだろう。

加茂の造語である「逆聖地」の意味は、人間によって生み出された「人間の生存が困難な区域」。5年前に起きた福島第一原発の事故をきっかけに考えたらしい。保護区(sanctuary)の一種ではあるが、鳥獣や環境を保護する区域ではなく、人間を環境から保護する区域、立ち入り禁止区域である。あえてその場所と立ち向かうには燃えるようなエネルギーがいるということだろうか。「逆聖地」のシリーズでは、火だるまの9人のうち1人が意外な展開を見せている。画像は展示作業風景。
posted by Junichi Chiba at 17:07| アート