2016年01月08日

Fire and Ice

Akira Kamo Anti-sanctuary 2014 Photo Kazuo Fukunaga.jpg
米国の詩人、ロバート・フロスト(1874〜1963年)について少し調べてみた。米国人に「Fire and Ice(火と氷)」という詩を教えてもらったのがきっかけであった。

Fire and Ice by Robert Frost

Some say the world will end in fire,
Some say in ice.
From what I’ve tasted of desire
I hold with those who favor fire.
But if it had to perish twice,
I think I know enough of hate
To say that for destruction ice
Is also great
And would suffice.

「世界は火で終わると言う人もいるし、氷で終わると言う人もいる」で始まるこの詩は、人類がどちらで終わるのがよいか、暗黙のうちに選択を迫っている。伝統的な詩形を用いた田園詩人というのがフロストの一般的なイメージのようだが、この作品に関しては哲学的な色彩が強い。英文学者のピーター・J・スタンリスによると、フロストの詩や散文の要素には、物質と精神、自由と平等、現実と夢幻など「永遠の対立が運命づけられている対(ペア)の関係にあるもの」が多く、火と氷もその一つである。

フロストは米国人に広く親しまれていて、元副大統領のアル・ゴアは2007年、ノーベル平和賞に選ばれたときの記念講演で、「火と氷」の一節を引用した。ゴアは「20年以上前に科学者たちは、核戦争が勃発すると大量の塵や煙が大気に混じり、太陽光を遮って『核の冬』が到来する恐れがあると指摘した。今、科学は、温室効果ガスを早急に減らさないと、永続的な『炭素の夏』をもたらす危険があると警鐘をならしている」と語った(朝日新聞DIGIDALより)。

もちろん核戦争(憎悪)で滅ぶのもいやだし、温暖化(欲望)で滅ぶのもいやである。どちらがよいか選べと言われて、選べるような性格の問題ではない。ゴアの結論も「どちらも我々の運命であるべきではない」であったが、私が感心したのは(ゴアの講演から)80年以上も前の一編の詩、しかも「素朴な田園詩人」と思われていた人のものが現代文明の問題を示唆していたという事実である。

フロストの詩を読むと、前衛とは外見や形式の問題ではないと思えてくる。画像は加茂昂「逆聖地」(2014年、油彩、カンバス、209×730センチ、撮影=福永一夫)。
posted by Junichi Chiba at 19:28| アート