2015年11月18日

学びは精神的な支え(福元章子トーク2)

Shoko Fukumoto 20151103.JPG
福元章子トークイベントの2回目(11月14日、橘画廊)。日本画家で元京都市立芸術大教授の竹内浩一さんと福元が「作品から学ぶ」をテーマに語り合った。今回の個展のタイトル「夢から来て夢へ帰る」の意図や作品中の装飾の意味などについて触れた後、竹内さんが福元に「(フランス象徴主義の画家)ルドンをどう思う?」と聞いた。「明るい色や夢的なところ」(竹内さん)といった福元作品との類似性の観点からの質問であった。

福元は以前から「ルドンと近いですね」と言われていたので、当然、意識はしていて、「(ルドンの絵が)一枚あれば何日でも妄想に浸れる」という言い方で親近感を語った。ただ「発想力自体は才能なので、見て学ぶところではない」とも付け加えた。むしろ福元が影響を受けた画家としてあげたのは、(19世紀英国の)ラファエル前派のロセッティやラファエル前派に連なるバーン=ジョーンズであった。

福元に言わせれば「空想をさも現実であるかのように描くのが絵の醍醐味」。そうした姿勢で絵を描いたラファエル前派は「精神的な支えになっている」と説明した。一方で、福元は竹内さんに「竹内先生の絵と(その先生である)山口華楊先生の絵では、同じ動物でも違う。どのように取り入れたのか」と尋ねた。竹内さんは「生きてきた軌跡も違うから」と、質問には直接答えず、山口華楊の特徴として「透明感のある奥深さ」を紹介した。

その竹内さんも(20世紀イタリアの画家)モランディが好きだと話すなど、日本画家でありながら西洋の画家の名前をあげているところが興味深いのだが、2人にとって学びは精神的な問題であることが次第に浮かび上がってきた。精神的な支えを得ようとすることは画家が孤独であることの裏返しなのかとも思わせる。

福元は昔、ある人に「気持ちで描くのはウブですよ」と言われ、「こまっしゃくれた(利口ぶった?)絵を描かないといけないと思った時期があった」と打ち明けた。しかし「色を重ねるだけで情感が出てくる絵画の力」を信じたい気持ちがあったらしい。あるとき、別の人に「信じて描くしかない」と諭され、吹っ切れたというエピソードを披露した。最後は竹内さんから「自分の魅力は自分で探せ」という話があったが、それは自身の作品を見ることの難しさを指摘しているようにもみえた。
posted by Junichi Chiba at 17:40| アート