彫刻家、伊東敏光が米サンタフェで開かれるアートフェア、Objects of Art Santa Fe 2015に出品する。販売業務委託先である米マーチンデール・ギャラリーからの出展だ(8月12〜15日、El Museo Cultural de Santa Fe、ブース番号B67)。6月ころスタッフの谷仲が米南西部の美術館リストを作ってくれたので、アートフェアの案内を兼ねて、伊東の「風景彫刻」について説明する文章を美術館に送った。
中にはメールで返事をしてくださる学芸員もいらっしゃるのだが、風景の意味がうまく伝わっていないと感じることがあった。私は風景イコールlandscapeだと思い、英語ではすべてlandscapeと書いていた。どうやら、それが違うようなのだ。日本にいるアメリカ人に聞いてみたら、landscapeは地形の物理的な要素を含み、客観的に認識できるものというニュアンスがあるらしい。
伊東の場合、風景を彫刻で表現しているのだが、この場合の風景とは、よそよそしく観察したものではなく、親しみを込めて「こんなふうに見えるよ」と表明したものである。いわば、眺める人間との関係の中から生まれてくるものであり、必ずしも客観性を持っているわけではない。このような「風景」を英語ではなんと言うのだろうか。
やはりアメリカ人に聞いてみると、われわれがどのように見ているかという観点で表現している空間であれば、sceneryやviewという言葉が近いようだ。文化の本質にもかかわりそうなことだから、簡単に片づけてはいけないという気持ちもあって、断定はできない。しかし何か言葉を選ばないと先に進めないこともある。9月に橘画廊で開く絵画のグループ展(8〜26日)のタイトルは「感じる風景」。とりあえず、英文のタイトルはAbsorbed in the sceneryとした。写真は6月の伊東敏光展「対馬三景」の搬入時。
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