2015年04月25日

香港の重慶大厦

Chungking Mansions.jpg
もう1カ月以上もたってしまったが、昨年10月以来5カ月ぶりに香港へ行ってきた。ホテル型アートフェアのAHAF Hong Kong とART EDITIONに参加するためだ。懸案の商談があるのでアートフェア自体は振り返る気になれないのだが、ウォン・カーウァイ監督の映画「恋する惑星」(1994年)に出てくる香港の街のイメージだけは何度もよみがえる。

この映画を思い出したきっかけは、「『恋する惑星』のトニー」で書いたように、浅野綾花が「恋する惑星」に触発されてつくった作品「トニーと若いわたしたち」(2015年)であった。せっかく香港へ行くのなら、繁華街の尖沙咀(チムサーチョイ)にある舞台の一つ、重慶大厦(チョンキンマンション)を見たいと思った。中国返還前の香港の雰囲気が残っていないだろうかという興味からである。

ガイドブックに地下鉄チムサーチョイ駅から徒歩1分と書いてあるので、アートフェア会場のMarco Polo Hong Kongから近いことは知っていた。ただ実際に行ってみて拍子抜けした。昨年春に行ったときに、何度も前を通ったビルだったからである。1年前は重慶大厦の前を歩いても重慶大厦に気づいていなかったのだ。しまらない話である。中国返還前の切ない雰囲気が周囲になかったからだろうか。

来る前は見たいと思っていたくせに、中に入ってがっかりするのはいやだ、映画のイメージを壊したくないと思い、ビルには入らなかった。ART EDITIONに出品した浅野はと言えば、重慶大厦の中を少し探検し、カレーライスを食べてきたそうだ。「大阪の第3ビルをもっとわい雑にした感じだった」と話していた。私の方は映画で見たイメージが上書きされずに済み、「恋する惑星」のイメージが今も思い返される。
posted by Junichi Chiba at 19:53| 海外