2015年02月15日

「恋する惑星」のトニー

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版画家、浅野綾花の作品が変わった。今回の個展「Uターンのまなざし」(2月3〜21日、橘画廊)で用いた技法は銅版画と、食品の包み紙やポリ袋などのコラージュ。50×40センチの画面にのびのびとした線で描いた顔と断片化されたモノのイメージが同時に目に飛び込んでくる。浅野によると、友人らにもらったモノにまつわる思い出を託そうとしたときに頭をよぎったのが「顔」であった。

たとえば、香港の俳優、トニー・レオンを意識して制作した「トニーと若いわたしたち」(2015年、エッチング、コラージュ)。ウォン・カーウァイ監督の映画「恋する惑星」(1994年)で主人公を演じたトニーの顔の形というよりも「若さや心躍る感じ、展望がある感じ」(浅野)をイメージし、おみやげのチョコレートの包み紙などを画面に貼りつけている。

昔、私がこの映画を見たときは、「California Dreamin'」をかけて踊るフェイ・ウォンのかわいらしさが印象に残り、正直、トニー・レオンの印象は薄かったのだが、改めてDVDで見てみると、たしかにトニーの生き生きとした感じが魅力的だ。チョコレートの包み紙に、パスタが入っていた袋などを合わせて同作品のコラージュの素材は計4点。それぞれは互いに無関係なのだが、アーティストの中では、若さや心躍る感じを象徴する俳優の顔を介してモノにからむイメージが一つにつながった。

来月出展する香港のアートフェア会場は繁華街、尖沙咀(チムサーチョイ)の一角。「恋する惑星」の舞台の一つである重慶大厦までは歩いて5、6分である。浅野は香港にいる間に行ってみたいと、目を輝かせていた。怪しい雰囲気の場所であるだけに、香港在住の友人に話したら、「え〜っ、あそこ行くの〜」と、微妙な反応だったそうだが。
posted by Junichi Chiba at 19:14| アート