
旅客船沈没事故に伴う自粛ムードの広がりにウォン高による輸出企業の採算悪化。先月、韓国経済が不況の入り口にあるといわれる中、ソウルのホテル型アートフェア、AHAF SEOUL 2014(8月22〜24日、ロッテホテル・ソウル)に参加した。思った以上の成果が上がったが、その中で一つ、初めての経験をした。お客さまのお顔もお名前もわからないまま作品を販売するという経験である。
最終日の終わり近く、アートフェア事務局のスタッフがスマホで電話をしながら橘画廊の部屋に入ってこられた。ときどき私の話も聞きながら電話の相手に作品の説明をしている様子だった。買うか買わないか迷ったまま帰路につかれた方が途中、購入へと気持ちが傾いたが、橘画廊は韓国語が通じない(通訳はいなかった)。そこで事務局に電話をかけられたという状況であった。結局、その方にはご購入を決めていただいた。
事務局スタッフによると、アートを購入された経験はあまりない年配の男性であった。ご家族と相談されたという話もうかがった。日韓関係が良くない中、初めて見たであろう日本人の作品を気に入ってお買い上げいただいたのは、とてもうれしいことだ。同じ作品に興味を持たれた方は何人かいらしたが、もしかしたらあのときの方かな、とは思った。何かお尋ねになりたそうな感じがあったから、なんとなくそう思っただけではある。
現地の第三者に作品の受け渡しと決済を頼み、翌日、日本に戻った。受け渡し方法を相談する時点で、アートフェア事務局にお客さまのお名前などをお聞きすることもできたが、あえて聞かずにいた。言葉の問題がなかったとしても、ギャラリーと直接連絡を取りたくなかったのかもしれないという考えが頭をよぎったからだ。顧客とどの程度向き合うかはケースバイケース。思い出すたびに、そんなことを勝手に考えている。
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